
ビジネスにおいてよく使われる文書の一つが「領収書」です。デジタル化が加速する現代では、この領収書もメールで送られるケースが増えています。しかし、その送り方に不明点や疑問を抱えている方も少なくないでしょう。
本記事では、メールによる送付の是非、具体的な手順や注意点について、わかりやすく説明していきます。メール送付時の問題点を解消するための実用的な解決策についても紹介します。
領収書はメールで送ってもいいの?
法律において、領収書を電子データとしてメールで送付する行為は、問題はありません。この点は、電子帳簿保存法によって明確にされています。ただ、取引先の企業がまだ紙にこだわる場合も多く、そういったケースでは配慮が必要です。場合によっては紙とメール両方で送付して欲しいと言われるケースもあるでしょう。業界の慣習や相手の要望に応じて、柔軟に対応することが大切です。
始めに、メールで領収書を送る際に知っておくべき基本情報を見ていきましょう。
印鑑と印紙の必要性
電子領収書には、基本的に印鑑や印紙は不要です。法律上、領収書に印鑑が必須であるわけではありません。しかし、それでも取引先の社内ルールで印鑑が必要とされる場合もあります。このような場合は、その企業のルールを尊重し、別の方法で対応する必要があるでしょう。
電子帳簿保存法の適用が必須
メールでデータを送る行為は、電子帳簿保存法でいう「電子取引」に該当。この法律は、国税に関する文書や帳簿を電子形式で保存できると規定しています。領収書もこの範囲に入ります。よって、メールを通じてデータをやり取りする際には、この法律で設けられた要件を遵守する必要があるのです。
過去には、電子で受け取った帳簿データを印刷する「紙への変換保存」が許可されていましたが、法律の改正でこの措置は基本的に禁止されています。
2023年末まで一定の例外措置が認められ、2024年以降も一部の猶予が設けられていますが、電子データとしてそのまま保存することを推奨します。
メールで送る際のファイル形式
メールに領収書を添付する際の方法は様々です。
それぞれの代表的な方式におけるメリットと気を付けるべき点を解説していきます。
PDFを利用する場合
PDFを用いた送付は、編集が困難なため安全性が高いとされており、最も一般的なファイル形式となります。PDFファイルには、基本的に変更を加えられない設定が可能です。しかし、特殊なソフトを使えば編集が可能な場合もありますので、ファイルを「編集不可」に設定することをおすすめします。
Word・Excelを活用する場合
この方式では、ファイルをそのまま送る形となります。しかし、これには注意が必要です。なぜなら、受け取った人が簡単に内容を書き換えられてしまうからです。編集を防ぐためには、ファイルに保護をかける手段もあります。ただ、WordやExcelがインストールされていない環境では、事前の確認が必要になるでしょう。
メールテキストに直接情報を記載する場合
領収書の詳細をメール本文に打ち込む手段もあります。ただし、その場合でも「宛名」「受領金額」「受領日」「但し書き」「送り主の情報」は欠かせません。さらに、メールは保存期間が短い場合があるので、適切な保存方法を考慮する必要があります。
メール送信時に領収書に記載する事柄
メールで送る領収書も紙のものと同様に必要な情報があります。基本的な記載項目とその詳細を確認して、正確に作成しましょう。
発行者の名前または法人名
領収書を出す側の名前は、必ず記載が必要です。住所や連絡先を追加するのは、一般的な慣習ですが、法律で強制されているわけではありません。
日付
取引が成立した日付を明記します。西暦か和暦かは問題なく、重要なのは統一性を保つことです。
取引内容の説明
販売した品物や提供したサービスの名前は、具体的に書きます。複数のアイテムがある場合、「その他」と追加するのも一般的です。
ただし、単に「お品代」と記載するのは曖昧さがあるため、メール形式では、販売されたアイテム名に加え、商品の識別番号や商品IDなどを追加で明示すると、さらに説明が明確となります。
総額
金額は税込みで書きます。日本円を示す「¥」や「金」、さらには桁区切りのカンマも多く見られますが、必須ではありません。
受取人の名前または法人名
料金の支払いをした側の正式な名前を記載します。個人なら「様」、法人なら「御中」を敬称として使用します。
領収書を送るメールの見本
領収書の送付においては、メールの開封率を高めるために、件名と文面に特別な配慮が必要です。具体的な文面のパターンを頭に入れておくと、書く手間が省けるでしょう。
メールのポイントと例文
メールの開封確率を高めるためには、件名のセレクションが不可欠です。具体的かつ明瞭な件名にすれば、受取人は一目でメールの主旨を掴めるでしょう。このアプローチによって、メールが迅速に取り扱われる可能性が高まります。
また、メールの本文も工夫が必要です。以下はその例文です。
~○○社から注文を受けた備品代を、09月30日付で入金確認できたとき~
<件名>
領収書送付のお知らせ【○○社】
<本文>
〇〇 株式会社 経理担当 △△様
いつもお世話になっております。〇〇〇(自社名)のXX(担当者名)でございます。
先日、お送りした備品消耗品に関する請求書の代金、09月30日に受け取り確認いたしました。
迅速な対応に感謝します。
領収書はPDF形式で添付いたしますので、ご確認ください。
何か問題があれば、お知らせいただけると幸いです。
【添付ファイル】
・領収書(PDF)1部
今後ともよろしくお願いします。
小ワザ
「PDF形式で添付します」という一文を入れることで、添付が漏れていた場合や、何らかの理由で開けなかった場合に、相手から指摘を受けやすくなります。
また、メールの終わりには「今後ともよろしくお願いします」と一言加えると、次回以降もスムーズな取引が期待できるでしょう。
領収書をメールで送るメリット
領収書を電子化し、メールで送付することで、さまざまなメリットが生まれます。効果が期待できるのは紙代や印紙代等のコスト削減、送付した領収書を検索・保管しやすくなる等の業務効率化です。以下で詳しくみていきましょう。
コストを抑える効果
メールでお送りする方法の一つの強みとして、コストの削減が挙げられます。紙に印刷して発行する従来の方法は、印刷にかかる紙料金やインク代がその都度必要です。さらに、取引先まで届けるための封筒費や送料も掛かってしまいます。
対照的に、メールでデジタルの領収書を送る手法は、印刷や発送にかかる経費がゼロです。さらに、紙では取引の金額に応じて収入印紙が必要な場合がありますが、メールでの送付にはそのような手続きが一切不要です。
手間を省く利点
メールで送るメリットとして、印刷や封入といった煩雑な作業が不要になります。従来は人の手による作業が必須でしたが、電子的に領収書を作成すれば、それ自体を手で書く時間も大幅に短縮できます。
保管場所の確保が不要
電子データで領収書を管理すれば、物理的な保管場所が要りません。一部の企業では、段ボール箱で積み重ね、保管しているケースもありますが、そのような場所取りが不必要で、オフィスのスペースをスッキリと保つことができます。
必要なときに素早く検索
領収書をデータ化しメールで送付すると、必要な時にファイル名で素早く検索できます。その上で、データがオンラインで保存されている場合は、誰でも容易にアクセスすることが可能なのです。
テレワークを円滑に
電子メールで送る手法は、テレワークのスムーズな運用にも寄与します。新型コロナウイルスの影響でテレワークが広がりましたが、メールで送る仕組みを採用すれば、どこでも簡単に領収書を発行・送信することが可能となり、テレワークの柔軟性が増します。
メールを送るときに気をつけること
メールはコミュニケーションの主要な手段となっていますが、その便利さゆえに陥る可能性がある落とし穴も。
ここでは、メールのやり取りで特に注意すべき点と対策方法についていくつか取り上げます。
誤送信
誤送信は、気をつけなければならない一番のポイントでしょう。特に、業務でのメール交換では、宛先や添付ファイルの確認が怠ると、取引先へ誤って送信してしまう可能性があります。
対策方法として、添付ファイルを付ける場合や取引先が多い場合は、送信前に内容をよく確認しましょう。また、多くのメールツールには「送信確認」の機能もありますので、これを活用するのも有効です。
セキュリティ対策
複数の人が同じメールアドレスを使っている環境では、誰もが簡単にメールの内容を閲覧できてしまいます。そのため、添付ファイルにはセキュリティ対策としてパスワードをかけることが考えられます。
注意点として、パスワードを別のメールで送信するなど、取扱いに工夫が必要です。この点を事前に取引先と相談するのも一手です。
まとめ
領収書のメール送付は、法的には問題ないため、急な要求にも柔軟に対応することができます。ただし、受け取る側の環境によっては問題が生じることもあり、事前の調整が不可欠です。
また、インボイス制度の開始や新しい制度が始まる際は、その内容に変更が必要となる場合があります。それに備えて事前に確認し、内容の不足や誤りがないようにしましょう。
領収書のメール送付について知っておくべき基本を押さえることで、スムーズな取引や業務遂行が可能になります。是非とも、今回の知識を日常業務に生かしていただければ幸いです。

《参考サイト》
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